教室の戸を開けたら、そこには

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 僕は、教室の1-4と書かれた板を見上げてから、深呼吸をした。今日は、いないかもいれない。そんな、不安が鬱陶(うっとう)しい。僕は、両の手で自分の頬を叩いた。  去年と同じように教室の戸を開けて教室の窓側に目を向けると独りの女性が、こちらの方に背を向けて立っている。その後ろ姿を見た瞬間に愛奈さんだとわかった。  僕は、その女性に近づいた。横顔を見て確認してから、『愛奈さん。お久しぶりです』と声をかけた。  愛奈さんは、返事をしなかった。ただ、何も言わずに僕の額を指先で小突いた。  僕は、やめてくださいと言ってから、愛奈さんの顔をみた。 『愛奈さん。なんで泣いているんですか?』  愛奈さんは、頬から伝う涙を手の甲で拭ってから、なんでもないよ。と言うだけで泣いている理由を教えてくれない。僕は、そのことを歯がゆく思った。 『とりあえず、泣くのやめてください』  僕は、鞄からハンカチを出してそれを愛奈さんに渡した。  愛奈さんは、僕のハンカチを受け取ってから、『少しは、大人になったじゃん』と言ってハンカチで涙を拭いた。
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