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愛奈さんは、涙を拭いたあと、僕にハンカチを返そうとした。
『洗って返してください』
泣いていた理由を教えてくれなかったこともあって、きつい言い方をしてしまったかもしれない。愛奈さんは、俯いていていた。
愛奈さんは、顔を上げて『わかった』と返事してから、ハンカチを肩に掛けていた鞄にしまった。
僕は、不機嫌そうな愛奈さんの表情を見てから、後悔の念が押し寄せてきているのを自分の中で感じた。
慌てた僕は、愛奈さんが肩に掛けている鞄を指差した。
『それ、可愛いですね』
僕がそう言うと愛奈さんは、どうやら喜んでくれたようで笑いながらありがとうと言って鞄を優しく撫でた。愛奈さんは、黙ったままの僕を見て質問を投げかけた。
『ねぇ、私の服はどう思う?』
『可愛いです』
『じゃあ、この靴は?』
『可愛いです』
愛奈さんは、半分口を開けて少しの間、呆けていた。
可愛いって言えば良いと想ってるでしょ?と愛奈さんは、怒ったような口調で言った。
僕は、慌てて否定したが、説得力のない僕の言葉は、何も意味をなさない。愛奈さんは、ふーんと言ってから、後ろを向いてしまった。
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