教室の戸を開けたら、そこには

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 愛奈さんは、僕の名前を聞いてから、『俊太って可愛い名前だね』そう言ってからおもむろに立ち上がった。 『もう、帰っちゃうんですか?』僕がそう言うと愛奈さんは、首を横に振って近くにあった机を調べ始めた。 『机の正面に名前が書いてあるでしょ?俊太くんの字ってどう書くのか気になったから探しているの』  僕の中学校では、机の正面に名前の書いてある紙が、鉄の窪み(くぼみ)に挟まっている。 『えっと、僕の席は』そう言って自分が使っている机を人差し指で示そうとした。 『いいの。自分で探すから』  愛奈さんは、手を前に突き出して僕の動きを制してから、机を一つ一つ優しく撫でて机の正面をのぞき込むようにして見ていった。  いくつかの机を見てから愛奈さんは、『見つけた』と言って、僕の方に近寄ってきた。  そのまま、床に正座していた僕の腕を掴んで立ち上がらせようとした。 『ちょっと、待ってください』  馴れていない正座をしていたせいか、足が痺れて動けないでいた。その様子を見ていた愛奈さんが、僕の両脇に手を入れた。 『何するんですか』  困惑している僕の上半身が少しだけ浮いた気がした。 『軽い。俊太くんって何キロ?』
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