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『39キロです』
僕が答えると『痩せすぎだよ』と後ろから愛奈さんの声が聞こえてくる。さすがに抱きかかえることはできなかったようで、愛奈さんは僕の体を引きずりながら歩いた。
『これでしょ?』
愛奈さんは、自信に満ちた表情で僕の名前が書かれた紙を指差した。
僕が『そうです』と言って頷くと愛奈さんは、『なんでこの漢字がつけれたの?』と僕につけれた名前の意味について聞いた。
あまりに唐突だったので僕は、少し考えた。
小学生の頃に一度だけ両親に自分の名前に込められた意味について聞いたことがあった。そのきっかけになったのが、学校から出された宿題だった。自分の名前の意味についてご両親から聞いてきてください。そう言っていた先生の顔を思い出すだけで、名前の意味については、思い出せないでいた。
『僕は、忘れました』と答えてから『愛奈さんの字はどう書くんですか?』と尋ねた。
『私のは、奈良の奈に愛するって書いて愛奈。ただ、可愛い文字だったからつけたって最初は、そう言ってた』
『そうなんですか』と僕が困った表情をしながら言うと愛奈さんは、幼かった頃の思い出を話してくれた。
『だけどね。小学生の頃だったかな。宿題でだされた名前の意味について両親から聞いてきてくださいって内容だったと思うんだけど』
僕は、思い出話の途中で愛奈さんの話に『あ、それ。僕もやりました』と共感した。
『やっぱり?』
愛奈さんは、怒ったような表情になってから、言葉を続けた。
『それじゃあ、なおさら忘れちゃいけないことじゃない』
僕は、自分を情けなく思った。今度からは、余計なことを言ってはいけない。そう、考えてから心の内で反省した。
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