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愛奈さんは、『話を戻すね』と言ってから思い出話の続きを語り始めた。
『それでね、特に意味はないって親に言われたら、どうしようもないじゃない?学校から貰った作文用紙に名前の意味を書いてって言いながら、しばらく泣いていたの。そしたら、お父さんが奈良県民のように愛が溢れる人間になりなさいって意味でつけたって』
僕は、呆けるしかなかった。まるで、とってつけたような漢字の意味に不安を覚えた。僕も同じようにとってつけたような名前なんじゃないかと失礼な考え方をしたからだった。だが、彼女は、それでも凄く嬉しかったのだと言う。なぜ、そう思ったのか僕は、愛奈さんに理由を聞いてみた。
『名前をつけてくれた。それだけでも良いんじゃないかと今の私はそう思っているの。けれど、小学生だった頃の私は、名前の意味が特にないってことだけで愛されていないんじゃないかって思っちゃったみたい。だから、簡単な意味でも、私は、両親から名前の意味を聞いてみて答えてくれただけでも凄く嬉しいって思えたの』
愛奈さんは、少し間を置いてから、『だから、帰ってみたらお父さんとお母さんに聞いてみて。嬉しいって感じると思う』と言った。
『僕は、小学生じゃないです』
小学校をあがってから、まだ四カ月程しかたっていない。そんな、僕の言葉に愛奈さんは、何も言わない。ただ、優しく微笑むだけだった。
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