教室の戸を開けたら、そこには

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 囁くように会話をしている両親の声は、僕に内容を聞かれてしまわないように気をつけている感じがした。声が途切れたのを合図にして僕は、扉を開けた。  母さんを見てみると何事もなかったように並べられた料理を箸で摘みながら、嬉しそうに微笑んでいる。父さんに視線を移すと虚ろな目をして僕を見ながら手招きをした。  早くこっちに来て食事しなさい。そう言いたそうな表情をしていた。  僕は、席に着いて料理を箸で摘みながら、自分につけられた名前の意味について聞いてみることにした。 『僕の名前の意味って何だっけ?』 『急にどうしたんの?』と母さんは、そう言って父さんの顔を見ている。父さんは、『もう、忘れたのか?』と苦笑いをしていた。  母さんは、『まったく』と言ってから、僕につけられた名前の意味を語ってくれた。  それは、僕が産まれる前にまでさかのぼってしまった。僕は、めんどくさそうにしながら、聞いていた。けれどもその話には、両親の愛が詰まっていた。  食事が終わってからも母さんの話はつづいた。そこに父さんも加わって母さんと二人で話している。母さんと父さんの話が終わったあと、僕は、母さんと父さんにお礼を言ってから、真っ先に自分の部屋へ向かった。  自分の部屋に入ってから、僕は、部屋の片隅に置いてある机と椅子に目をむけた。  その椅子に座って机の引き出しから、表紙に自由帳と書かれたノートを引っ張り出した。そのノートに自分の名前の漢字に込められた意味について簡単に書き記していった。  俊太の俊は、才知を持った人、足が速い人。両親辞典で調べた。俊太の太は、太い。人の計りでは、図れないほどの大きな人間になるようにという意味でつけた。  父さんと母さんは、欲張りだ。自分で書いていてそう感じた。  僕は、部屋のレースのカーテンと窓を一気に開けて夜空を見上げた。  愛奈さんは、僕の名前の意味についてどう思うんだろう。そんなことを考えながら、僕は、来年の夏に愛奈さんと再会できることを楽しみにした。
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