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開けた教室の扉。
射し込みオレンジ色の暖かい日差し。
柔らかな優しい風が窓から流れ込み、レースのカーテンを揺らしている。
私はと言えば、教室のドアの所で立ち止まっていた。
なぜなら、私の好きな人が窓から外の景色を見ていたからだ。
入りたいのに、変な緊張感が体を支配して動けない。
ーどうしよう……。
「櫻井さん…?」
『っ!!……い、五十嵐君』
ふと見上げた視線の先には、彼がこちらを向いていた。
急に名前を呼ばれて、胸がドクンと脈を打つ。彼を見てますます緊張感が増して声が上擦ってしまった。それに彼がクスッと笑う。
ーうぅ…。恥ずかしい……。
「入らないの?」
と、彼の声。
『う、うん……。』
わたしはおずおずと足を進めて教室に入る。
そう言えば、彼はこんな時間まで何をしていたのだろう。部活には入っていないし、彼の所属している委員会は今日は無いはず。何と無く気になって彼を見れば目が合った。
ドクンッ…!
『ッ!!……』
ー見なきゃ良かった!!
一気に顔に熱が集まって、視線をさ迷わせた。
どうしようと頭が混乱してしまう。
「実は、櫻井さんを待っていたんだ…」
『……ぇ‥?』
ー私を、待ってた…?
彼の柔らかな声が私の鼓膜を震わせた。
「君が、好きなんだ…」
オレンジ色の夕陽の中で、彼は微笑んだ。
私の頬に、一粒の雫が零れた。
あぁ……神様、どうかこのまま…時間を止めて下さい。
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