教室の戸を開けたら、今が"おはよう"だったかを悩んだ。

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床は隣の真っ赤な絨毯とは違い、シックな色合いのブラウン。しかし足を踏み出すのを躊躇う、見るからに高そうな毛並みと、職人技の見事な模様。 絨毯の色で部屋を仕切っているように見えるが、目の前のこの部屋には絵画や壺が壁際に並べられているだけで、ほとんど何も置かれていない。 それもそのはずと言わんばかりに、ブラウンの絨毯の真ん中には、これまた他の高級品とは比べ物にならないほどある意味高級な調度品……いや、お姫様がいたのだ。 ……そう、お姫様が。 毛先がくるくるした腰まである金髪、透き通ってビー玉みたいな青い瞳、小振りながらツンと高く形のいい鼻、小さな唇には華やかなピンクのルージュ。 纏うドレスは全体的にはピンクと白を基調とし可愛らしい印象。まるで人形のようで、当然のようにこの突然現れた洋風な空間にマッチしている。 扉に手をかけたまま、ぽかーんと口を開け眼球をくるくると動かし、高速でまばたきをするばかりだったが、目の前のお姫様が一歩、こちらに近づいてきたことで体に緊張が稲妻のように走る。 とりあえず、"気をつけ"した。
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