教室の戸を開けたら、今が"おはよう"だったかを悩んだ。

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カツン、と陶磁器のティーカップを合わせるような音がした。それが彼女の足元を飾るヒールの音だと気付くのに、ゴクンと唾を呑み込む一拍が必用だった。 「あなたには今、この城はとても裕福なものに見えるでしょう……」 お姫様は口を開いた。 花びらのような唇からこぼれる声は、うっかりすると心を奪われそうなほど澄んでいて、心臓の辺りがぎゅっと苦しくなる。その声が悲しみを含んでいることに気付くとさらに、心臓の音は少し遠慮を始めた。 「今この国は、内戦により破壊されています。戦争です……。街の子ども達や女性、老人も怪我を負い、今も……息絶えています」 見た目はフランスかどこかの国のお嬢さんなのに、口から出てくるのは流暢な日本語。不思議だ。 「私は、この国の国主の帰りを待っています。父は……自らの手でこの戦争を終わらせると、兵を引き連れ……」 このお姫様、話が長いらしい。ちょっと頭が冷静になってきた。 つまり、国主不在の戦時中の今現在、必用とされているのは、救世主! 争いを収め、弱きを助け、未来へ導く先導者が必用だと、そう言いたいんですよね?
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