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お姫様は一粒の宝石にも勝る輝きを、ほろりとこぼした。それを、見るからに白く滑らかな布に包まれた指先で拭うと、隣の部屋の遠くへ視線を飛ばした。
するとどうだろう、見る間に表情が変わっていくではないか。
「ですから今、この国には……あっ!……えっ!?……まぁっ!」
もちろというかなんというか、こちらは何もしていない。お姫様の百面相に見とれていると、ドレスの裾を摘まんで隣の部屋に入っていった。どうやら窓があるらしい。
「あぁ……今、現れました……私達の救いが……!この国に平和が戻りました!まぁ、あそこで老人が救い出されている!あちらでは離ればなれになっていた恋人が抱きしめあっている!……もうこの国に不安はありません!この国は救われました!」
お姫様はとても嬉しそうに笑う。この国の民に笑顔が戻ったことを心から喜んでいる。
おわかり頂けただろうか。今、目の前で一国一城が危機にさらされ、そして救われたのだ。
もちろん、こちらは何もしていない。
……何もしていないっ!
そっと扉を閉じて祈ろう。
ほんの少し垣間見ただけのこの世界が、これからも平和でありますように。
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