青いクラゲ

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妻は鼻持ちならない女だが、束縛するタイプではなく、俺など放ったらかしで、自分で自由に生きている。 ミナコとは全く別のタイプで、実にサバサバしており、俺が何をしようが全く我関せずで、付かず離れずでこうしてたまには夫婦水入らずで旅行に出かけたりして、これほど楽な女だと知っていたら、もっと早くに結婚していれば良かったと思うほどだ。 沖縄の海は、綺麗だった。高級ホテルのプライベートビーチで俺達は、旅行を満喫した。俺は、妻に良いところを見せようと、得意な泳ぎで、かなり沖の方まで泳いで行った。心配した妻が遠くから叫ぶ。 「そんな沖まで行って大丈夫なの~?」 俺は、笑顔で手を振って答えた。 透明度の高い海は青く澄み、海の底に泳ぐ魚が手に取るように見えた。 もう少し。俺は、さらに沖に向かった。 すると、海中の温度が急に冷たくなった。足が固まってしまい、ピクリとも動かなくなってしまった。 ヤバイ。足が氷のように冷えた。俺は海の中を覗いた。 すると、青い物が海を漂っていた。その海を漂っていた物が俺の足に絡み付いていた。氷のように冷たく感じたのはその漂流物が足に絡み付いていたからだった。冷たくてずるりとしている。 クラゲ?それにしては大きい。絡みつかれて動かなくなった足のかわりに、手だけで水を掻くがもう限界だ。 俺は目をこらして、その絡みついたものを凝視した。 「ミナコ!」 その顔は水中から海面の俺の顔を見上げていた。 俺はパニックになった。そんなことがあるわけがない!俺は必死でもがいた。 ミナコのあらぬ方向に曲がった手足と首がフワフワと漂っている。あの日岩にぶつかって折れた形に。 まるでクラゲのように漂っている。 「ミナコ、許して。許してくれえええええ!」 俺は足をばたつかせて、ミナコを振り払おうとした。 ミナコが笑った。その途端、足にチクリと痛みが走った。 遠くなりかけた意識がその痛みでまた戻ってきた。 「た、助けて!」 痛む足が、いつの間にか解放されていた。 「あんた、大丈夫か?」 一隻のトレジャーボートが通りかかり、俺は何とか救助された。 「あ、青い物が!俺の足にまとわりついてきて!」 俺は必死に訴えた。足には激痛が走った。 「ああ、あんた、青いクラゲに刺されたんだな?足が腫れ上がってる。大変だ。すぐに病院に行かなきゃ。」
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