螺旋構造の存在証明

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「それで、お前はなんでこんなものを作ったんだよ」  まったく。学園祭でこの能力を発揮すれば良かったんじゃないのか?  椅子と机が上手く組み合わさって出来た、教室の中にある廊下を渡る。トンネルのように狭められていた。  上から見れば、この構造は螺旋構造だと思う。扉から入って窓の方向へ直進、その後、ほぼ直角に体の動きを変えさせられた。 「砂上の楼閣、机上の空論。不安定なものや、現実で達成が不可能な論理。どうして、なにかの上にあるものは固定されないのかしら? 台座がわるいのよね。砂の上だとグラグラするわ。でも、机の上ならなんとかならないのかしら? 私は今、机の上に座っている。でも、このまま何時間だってこのままでいられる自信がある。それなら、悪いのは空論? 空の論。内容のない、実のない論ってこと?」  また、よくわからないペースで話し始めた。戻すのも億劫になって、適当に返答しておく。答えを求めているのかもわからないのに。 「釘でもあればいいんじゃないのか? 空論に形があるのかは知らないけどよ。机に打ち付けてしまえば、もう離れることもないだろ」  窓はカーテンが覆い、更にその内側を椅子や机で積み隠しているようだ。手すりとなった金属の脚を手で伝うと、気持ちのいい冷たさが触れる。 「それだわ! と、思ったけど残念。空論は虚ろなもの。あなたが言うとおり、形がない不定形なものなの。空に釘を打ち付けても、酸素だって二酸化炭素だって固定はされず、もちろん原子や電子、中性子だって捉えることは出来ないわ。どうすればいいのかしら」  そんなの知るわけがない。興味もない。  園児の頃に体験した覚えのある、アスレチックな教室内をぐるぐると回っていれば、あいつの言葉はどれもどうでもよく思える。  このまま回り続けていれば、あいつは捕まるし、この楼閣もどうにかなるだろう。
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