1人が本棚に入れています
本棚に追加
「それの答えがこれなんじゃないのか? 砂上の楼閣と机上の空論を混ぜ合わせて、机上の楼閣を作り上げた」
興味はないしどうでもいいが、話は伸ばしておくことにした。カーテンが閉まっているからだろうが、気温も高く、ただ動いているだと気が萎えてくるからだ。
「そう。机や椅子だけで城を作れば、それはまさに砂上の楼閣と呼ぶに相応しく、すぐに壊れてしまいそうでバランスが悪いから、あり得ないと思われるけど、あり得ないのならそれはつまり机上の空論となるわよね。だから、私は砂上の楼閣でいて机上の空論でもあるこの現象を作り上げた。そうに違いないし、あなたが来るのも予想外だった」
この城が砂上の楼閣というのには同意だ。なんせ、ビニール紐や縛る類いのものもなく、これらは本当に積み重ねたり組み合わさっているだけでここにある。
パズルのピースのようにきっかりとはまったこのバランスは、奇跡的としか言えないが、いつ俺の頭上に死が降ってくるか内心不安だ。
「いつものことだ。俺がお前に巻き込まれて何回目だと思ってる」
あいつは黙した。今日も俺は、あいつを繋ぎとめないといけない。
あいつをいつか消えゆくシャボン玉に喩えれば、俺はそれを凍らせる役になるだろうし、ひらひらと容易に舞ってしまうような布であれば、俺はまさしく床に打ち付ける釘となろう。
「そろそろ、姿を見せろよな」
沢山描いてきた直角の軌跡を顧みるに、そろそろ中央に着いてもいい頃だ。
「もう、私に逃げ場はないよ」
そんな声が聞こえ、直進すると長方形の空間が見えた。あの奥にあいつはいる。
机と椅子の隙間を通ると、今までよりも開けた空間に着いた。
「やっと見つけたぞ」
あいつは、嬉しいような残念そうなよくわからない顔で、泣きながらはにかんだ。
最初のコメントを投稿しよう!