沈まぬ太陽、明けぬ夜

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「とうに見慣れた光景だろう。それに」  笑う魔王の姿が掻き消える。と、刹那にも満たず、その姿は勇者の背後にあった。腕を振るう。避ける間もなく黒き鎌が振られ、勇者の首は宙を飛び、地に落ちた。  ――だが次の瞬間、魔王の体から鮮血がほとばしった。にやりと笑い、魔王が再び勇者の体から距離をとる。 「――気持ち悪いというなら、貴様の方も大概ではないか」  視線の先には、剣を振りぬいた勇者の姿。先ほど切り落とされたはずの首は元通り肩の上に鎮座していて、落ちたほうの首はいつの間にか消失していた。小さく声を漏らし、魔王は嘲る。 「光の奇跡とやらも大層なものだと常々思うよ、このような化け物を作りだすのだからな」 「黙れ、化け物は貴様のほうだ!」  叫び、走る。剣が聖力を帯びて一層の輝きを放ち、黒き魔力を細切れにしていく。乱れ咲く、光の華。暗黒の爪牙をそれに打ち合わせつつ、魔王は楽しげに勇者に話しかける。 「死しても教会に行けば復活する勇者のシステムは、前々から不気味だと思っていたがな、このような化け物を作るとは! 魂に聖なる紋を刻み込み、教会に行かずとも即時復活! 聖力体力も完全回復! いやはや、人間とは実に恐ろしい!」 「光の精を愚弄するか、化け物よ!」 「褒めているのだよ。このような戦闘兵器、我ら魔族でさえも思いつきもしなかった! 人間とは実に素晴らしく――悍ましい!」 「黙れェ!」  光刃が魔王の腕を切り落とす、同時に黒爪が勇者の胴を両断する。間髪入れず魔力と聖力が傷口を繕い、間を置かず剣戟は続く。
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