沈まぬ太陽、明けぬ夜

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「はぁっ!」  勇者の掛け声とともに空中に白い円が浮かぶ。聖力で形づくられた魔法陣。そこから光が溢れ、炎弾が飛び出す。 「ふんっ!」  魔王はそれを生成した魔力障壁で防いだ。暗黒の壁と灼熱が衝突し、眩い光を放ち対消滅する。魔王も負けじと魔法陣を展開、そこから紫電が迸る。勇者は聖力に輝く剣でそれを両断。体を翻し、いつの間にか放たれ背後から迫っていた魔力弾も刃の下に消し去る。背中に切りかかる魔王に対しては、光の槍を作り、貫いた。  光が飛び交う。炎が、氷が、雷が。術式でくみ上げられた殺意の塊が飛び、衝突し、粒子をまき散らして消滅する。術を打ち合いながらも、魔王と勇者の刃は打ち合わされ続け、硬質音ががらんどうの広間に染み渡る。 「いい術式だ勇者よ。さすが、幾度もの人体実験の最高傑作だなぁ!」 「俺の体は人類の希望の結晶、命を捧げた人々の誇り! そのような野蛮なものではない!」 「実態に変わりはあるまい? おびただしい数の死の上に立つ、清らかな勇者様よ!」 「全て、貴様ら魔族のせいだああああ!」  刃の放つ橙の火花、打ち交わされる術の白と黒、そして時折緋色の鮮血が飛ぶ。死の乱舞は止まることはない。魔王が傷つくたびに魔力は結集し、肉体を修復する。勇者が死ぬたび聖力が溢れ出し、その死を抹消する。まるで永久機関、戦うためだけに存在する、二つの人形。その戦いは止まらない。 「貴様のために、何人もの人が死んだ! 俺は貴様を許さない!」 「今更それが何になるというのだ!」  魔王を剣で弾き飛ばし距離をとった勇者が聖言を唱え、巨大な光の帯が放たれる。魔王は黒霧を纏った両の腕でそれを受け止め、歯を食いしばると、 「ぬおおおおおおおおおお!」  力を込めて、薙ぎ払った。光が魔王の下から飛び出し、長い年月により風化した魔王城の壁に突き刺さる。その衝撃に耐えられず、壁は脆くも崩れ去った。
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