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「ホームルーム始まりますよ」
僕が席に座ると、入り口からユラリと影が現れる。
思わず現れた影に、目が釘付けになった。
その影は、ドロリと溶けている。
汗の様に流れる液体で、床が黒く染まっていく。
「皆さん席についてますね」
溶けた身体なんてお構いなしに、好青年の声が聞こえる。
でもこの声は、聞き覚えがあった。
僕のクラスの担任、御門先生だ。
「せんせー」
「どうしたー?黒崎」
突然僕の隣の、女子らしき影が手を挙げる。
あっ、知ってるその名前。
そうだ、黒崎ミホ。
隣の席の友達。
理解した途端、少しずつだがミホの姿が見えてくる。
他の影も、いつものクラスメイトの顔に。
じゃあやっぱりここは、現実?
「ヒロキくんが影を連れてきていないでーす」
はっ?
影を、連れて来てない?
その言葉を聞いたクラス全員、僕の方を向く。
ぼそぼそと何かを言いながら、僕を睨む。
何をしたってんだ……!!
僕が、僕が……。
「城澤くん」
突然名前を呼ばれ、肩を震わせる。
ドロリと溶ける影に、思い切り睨まれている気がした。
当然溶けている身体に、目なんて有りはしないのに。
どこか鋭くて、恐ろしい視線を感じる。
「どうして影、忘れたんですか?」
さっきまでとは違う、背筋が凍るような声が飛んできた。
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