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「起きろ!!城澤!!」
先生の声に、僕は勢いよく顔を上げる。
周りを見渡すと、さっきまでの影たちは消えていた。
見慣れた景色、見慣れた友達。
僕、やっぱり寝てたのか。
上を見上げたら、先生が怒った顔でこちらを見ていた。
僕がすみませんと謝ると、クラスのみんながドッと笑う。
やっぱり、いつもの光景だ。
安堵の溜息と、笑みが思わず零れる。
「ヒロキくん、おはよ」
ちょっと馬鹿にしたような笑いが、隣から飛んでくる。
黒崎ミホ。
……だよな?
「ずっと眠ってたから、もう起きないかと思っちゃった……」
ミホが、僕と反対を向いたまま話す。
違う、こんなのミホじゃない……!!
「でも起きてくれたから、また続きできるよね」
声がおかしいし、続きってなんだよ……!!
一瞬で振り返ったミホの顔は、また思い出させる。
あの黒くて禍々しい、影の顔に。
「ひぃっ!!」
声をあげて、椅子から転げ落ちる。
徐々に影に浸食されていく、ミホの身体。
ミホだけじゃない。
目の前に見える景色全部が、影に染まる。
歪む視界に、また影たちがやってきた。
「どこまでが、夢なんだ……」
僕はボソリとその言葉を口にしたとき、影はけたたましく笑った。
「ずぅーっと、夢かもしれないね」
また僕は、深い闇に落ちていった。
いつ、目を覚ますんだろう。
どこが、現実なんだろう。
ひたすらそう考えながら、覚めない夢の終わりを願った。
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