第1章

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目の前には見慣れた扉。 廊下に立つ僕は、その扉を静かに開けて教室へと入った。 そこに居たのは一人の女性、同じクラスメイトの藤村さんだった。 ──彼女は何をしている? 何も、何もしていない。ただ窓の外を眺めているだけ。風で長い髪がパタパタとなびいてて、正直僕はその後ろ姿に一瞬ドキっとしたんだ。 そして僕に気付いた藤村さんは口元を歪めて話しかけてきた。 「一之瀬じゃん……どしたん、こんな時間に?」 こんな時間……ああ、そうか今は放課後か。 野球部の声が外から聞こえるし、よく見たら教室も黄色く染まってた。 ──君は何て答えたの? 僕は忘れ物を取りに来たことを伝えたんだ。 ──忘れ物? そう、自分で描いた漫画とか詩とか格好いい台詞とか色々と書き留めたノート。 これをもし誰かに見られたら僕は確実に不登校になっちゃうよ。 ──その秘密のノートのこと、彼女は知ってる? ううん知らないよ。 机の中から取り出した所は藤村さんも見てたけど、表紙は数学のノートってことにしてあるから。
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