第1章

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家では恵子がコーヒーが好きなのでインスタントコーヒーがたくさん買い置きしてあったがどうにも味が薄くまずかった。どうせ安いスーパーの特売品だ。うちもコーヒーメーカーでも買えばいいのに。そう竜一は毒づいた。 深くて味わいのあるコーヒーを飲みながら優花と話をしているとしだいに落ち着いてきた。ついさっき犯罪を犯したのも忘れていた。俺は窃盗をしているのではないか。まだ間に合う。優花のいない間にまた同じところにチケットを戻しておけば俺は罪にならない。しかしどうせ芸能事務所などあくどい事でもうけているに違いない。チケット一枚なくなったぐらいでどうってことないだろうという考えが竜一の頭を支配していた。何より竜一は金に困っていた。 一時間ほど優花とたわいもない音楽談義をしたあと何事もなかったかのように優花の家を出た。もう罪悪感はなかった。竜一はそのまま駅前にもどり金券ショップに入った。
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