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川崎は見透かしたようにふんと鼻を鳴らした。
「本当にそうかわからないけど、別に大丈夫よ。いない間も時給はもらっているから。楽ちんでしょうがないしね。教える内容もいつも簡単すぎて申し訳ないぐらい。こんなの普通に学校の授業を聞いていれば誰かに習う必要なんてないんじゃないの。あなた学校の授業聞いてるの。」
川崎に言われたことは図星だった。授業中は新しい曲の歌詞やらメロディーを考えるのに必死でほとんど授業の内容は頭に入っていなかった。
「聞いてはいるんですけど・・。」
濁して逃げることにした。
「どうでもいいけどこのままじゃ大学どころか短大も受からないかもね。あなた高卒で働いていくら稼げると思っているの。しょぼい人生送りたくなかったら勉強しなよ。音楽活動なんて何の金にもならないのに時間の無駄ね。」
「それにさっき変な、さえないおじさんと一緒に歩いて帰ってきたでしょう。気持ち悪い。」
どうやら竜一と一緒にいたのを見られていたらしい。川崎に見られるのは別にかまわないが父親に告げ口されたら、なんて言われるか。優花は川崎の機嫌をなるべく損ねないように教科書を広げると勉強を始めた。横で川崎は携帯をいじりはじめた。男遊びが忙しいのか頻繁にメールの着信音が鳴ったが気にせず勉強に集中することにした。
第七章 初めての撮影
恵子は待ち合わせの時間より少し早くついた。すくすくプロモーションの事務所は思っていたよりは立派だったが大手みたいな派手さは無い。ビルのエントランスを抜け事務所の入口を入ると堀口が待っていた。
「岩間さん。待ってましたよ。場所はわかりましたか?」
「ええ。まあ。今日は連絡いただいてありがとうございます。」
「とんでもないです。登録いただいた時から結菜ちゃんの笑顔と可愛らしさは群を抜いていたので是非うちの専属モデルになってもらいたいと思っていたんですよ。そこにちょうど今回仕事が来たんで‥。とりあえずそちらに座ってください。」
恵子は応接室のソファに通され腰をかけた。一緒に来た結菜は落ち着きなく事務所内をっきょろきょろ見渡していた。
「今回の仕事は、地元の衣料品スーパーからの依頼なんです。ベビー用品などを扱うチラシに乗せるモデルを募集しています。定期的にモデルを変えて広告を出すので私が是非結菜ちゃんをのせたいとプッシュしたんですよ。」
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