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カツカツ、と俺の履いているブーツの音が廊下に鳴り響く。周りの研究員がこちらを見ているが気にしない。いや、気にしてる余裕がなかった。
バンッと大きな音を立てて扉を開く。全ての元凶であるそいつは優雅にお気に入りの白いソファに寝そべっていた。ソファは扉側を向いていないので、はみ出た足先が見えただけだが。
「おいっ、どういうつもりだ、イノオ」
ソファの正面に回り込み、右腕で目元を隠している元凶、イノオに話しかけた。怒鳴りかけた、の方が正しいかもしれない。
「………どういうつもりって、前々から言ってたこと…ふぁ」
イノオは腕を少しだけずらし、片目だけこちらを見て答えた。そしてあくびをしながら上半身を起こし、こちらを向いてソファに腰掛ける。その無防備な腹に一発蹴りをいれてやりたいと思った。
「それと、イノオじゃなくて、ご主人様でしょ?」
「誰がてめぇのことそんな呼び方するか」
「ヒカルこわーい」
きゃっきゃと女子のように笑う。俺が怒っているのが面白いのだろう。挑発してるつもりだろうが、今はそれに付き合っている暇はない。
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