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「うわぁー!ひっろー!ほらっタカキ!見てみろよ!廊下で寝れるぜ!」
「ふふ、アリオカくんはしゃぎ過ぎ」
「だって広いし綺麗だし…あっここは何の部屋かなぁ!」
玄関の鍵を開けた瞬間にドタバタとせわしなくこれからおれらが住むマンションの一室を動き回るアリオカくん。どっかの豪邸みたいだなー!なんて満面の笑みを見せているけど、ここは至って普通の2人で暮らすのに十分な広さの部屋だ。玄関から部屋の扉まで何百メートルもの廊下が続いているとかそういう訳ではない。それでもアリオカくんにとってここが豪邸だと思うのは、彼の過去が影響している。こんな言い方も良くないが、彼はイノオくんの施設に入るまでとても貧相な暮らしをしていたらしい。3日に1度何か口にできれば運がいい方で、何度も生死の間をさまよったとか。本人から聞いたことはない。だから、おれはそれ以上アリオカくんの過去を知らない。
「ここ、何だろうな?俺なら入れるけど、タカキは無理だなー!…あっ、これって風呂?!でっけぇー!」
靴箱を開けてみたり、風呂場を覗いたりするアリオカくんの目は輝いていた。
(やっぱり、正解だった)
アリオカくんがこんなに嬉しそうにしている。おれだって嬉しくなる。彼にとってもおれにとっても、外に出るのは夢だったから。
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