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「透明な文ってどう書けばいいと思う?」
僕は彼女の突然の言葉に驚く。
ツタが壁を覆うこの木造校舎はもうすぐ壊される。
彼女は真っ白なノートをパラパラとめくる。
この場にいるのは僕と彼女だけだ。
「いきなりどうした」
「ん?お話しを書こうと思って」
どこか冗談じみたように話す彼女は埃の被ったイスに座る。
「何ページくらい?」
「四百文字くらいかな」
作文用紙一枚のお話しとはまた随分と短い。
「ふふ、書いたらあげるね」
彼女は笑う。
「貰ってあげるよ」
楽しそうな彼女に僕もつられて笑った。
あれから数年。
木造校舎は壊されることはなかった。
僕は置いてきぼりにされた、埃まみれのノートを手に取りページをめくる。
彼女の文字に辿り着き、彼女の文思わずに笑った。
「さて、アイツに届けてやろうかな」
僕と彼女の関係は?
いい加減、恋人にしてください。
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