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「指図してるんじゃねぇっ、うおっ!?」
「どうした。チッ!! 縄がくくりつけられてやがる。いつのまにに!!」
「だったら早く、そのナイフで斬れよ。そのナイフは飾りかっ!!」
「うるせぇ、今、やってんだろ」
男達の怒鳴り声を無視して、陰火は神社の物陰に隠れた。男達の視線を頭上に向けることで、縛っていた縄を輪っかに結び、男達の片足に通しておいた
(まぁ、直接、縄をくくりつけてしまう時間もありませんしね)
明るい場所ならすぐに気づくだろうが、今は夜、薄暗い神社、加えて片方はナイフで殺されそうになった。互いの関係は険悪だ。足止めくらいになるだろう。
「今のうちに逃げ出して」
「グヒッ、可愛いネズミさんをみーつけた」
「っ!?」
陰火の背後に、汗をだらだらとかいた巨体の男がニヤニヤと笑っていた。
「グヒッ、安心していいよぉ。ボクは君みたいな。小さい女の子が好きなんだから。さぁ、お着替えしましょうね」
「遠慮させてもらいます!!」
(ここにはロリコンと変態しかいないんですか)
必死に逃げるが、陰火の幼い身体と、巨体の男ではスピードも、体格も違った。巨体を単純に前に倒してしまうだけでよかたった。ロケットのように突進してきた男は陰火の身体を突き飛ばし、贅肉に包まれたその身体で地面と挟み込んだ。鼻息と脂っこい汗の匂いで陰火の嫌悪感はさらにあがる。ここでチェーンソーで応戦すれば、ここにいる不良くらい皆殺しにできるけれど、
(そんなことできない)
皆殺しにしてしまったら、もう二度とあの場所に戻れない気がした。もうとっくの昔に自分の両手は真っ赤に染まった殺人鬼なのに、都合のいいことを言ってるんじゃないと笑われるかもしれないけれど、
(やっと、安心できる場所ができたんだ。一人じゃない、安心できる場所)
守りたかった。真朱達がいる場所を、勝手に出て行こうとしてと責められるかもしれないけれど、
(こんな奴らに汚してほしくない。だから、わたくしが)
守ると覚悟を決めたはずなのに、うまくできない。
「助けて、助けください。山都」
そして、あの金髪の少年に助けを求めていた。グビグビと男の笑い声にかき消されるほど小さな声だったけれど。
「ああ、助けるっ!!」
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