第1章

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「なぜ、ここに居るんですか?」 「なんでって、陰火ちゃん。僕は、夏祭りの運営委員だからね。お仕事してるのさ」 じゃあ、ガラの悪い不良達をしっかり取り締まれと文句を言いたかったが、面倒だったので黙っておいた。 「それにしても、陰火ちゃんも、こういうイベントに興味あったんだねぇ。雄太郎お兄ちゃんは嬉しいよ」 「誰が、お兄ちゃんなんですか。おっさんの間違いでしょう?」 「嬉しいこと言ってくれるねぇ、でもさ、陰火ちゃん。おっさんはヒドいよ」 「知りませんよ」 プイッとそっぽを向く、陰火に雄太郎はうんうんと頷いた。 「陰火ちゃん。悩みは解消されたかな?」 「何様のつもりですか。わたくしに悩みなんてありません」 「相変わらず、素直にならないなぁ。ま、陰火ちゃんがそれでいいならいいんだけどね」 ニヤニヤと笑う、雄太郎に陰火はジロッと横目で見た。この男と居ると、あの青色の着物の物語の神様と居るような感覚になる。全てを見透かされているような嫌な気分だ。 「ホラホラ、陰火ちゃん。列も進んだみたいだし、進んで、進んで」 「わかってますよ」 「それとも、陰火ちゃんは、あの金髪くんに一緒におみくじが引けなくて、ご機嫌ななめなのかな?」 「そ、そんわけないでしょう!! どいつもこいつも山都大聖、山都大聖と、わたくしは何とも思ってません!!」 「わー、陰火ちゃんが怒ったぁ。怖いなぁ」 「もう、二度とわたくしのまえに姿を表さないでください」 「じゃーねー」 「消えてしまえっ!!」 と叫ぶと、雄太郎がヒューッと逃げて、大勢の団体客と共に姿を消した。もう、おみくじという気分でもなかったが、せっかく並んだ行列を今更、抜け出す気分になれず、陰火はおみくじを引いた。 『苦悩ある場合は、想い人が解決させてくれるだろう。しかし、想い人は受難あり、用心されたし』 悩みが解消したなんて言えないが、少しだけ心の重荷が軽くなった気分だった。陰火はおみくじを、仕舞い、フウと一息ついて、山都のもとに戻った。 「お待たせしましたか?」 「いいや。ぜんぜん。どうだったんだ、おみくじの結果は?」
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