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「秘密です。それに貴方に教えるつもりはありません」
このおみくじだけは、この男に見られたくなかった。
「ま、見せたくないんだったらそれでもいいけど、帰ろうぜ」
と山都が手を差し出そうとしたとき、陰火は自分から山都の手を握った。
「なんですか。はぐれても面倒なので、手を繋いだだけです。早く帰りましょう」
「ハイハイ」
じゃあ、早く帰るかと山都が言おうとしたときだった。夏祭りのスピーカーから放送が響き渡った。
『素麺、大食い大会。受付中でーす。参加希望の方は』
「山都大聖」
「なんだ。陰火」
「行きましょう」
「どこに?」
「素麺、大食い大会に決まってます」
フムッと鼻息を荒くする陰火に、山都は、
「あんなの売れ残った素麺の処分に困ってるだけだって、やめとけって、すっげー力だな。おいっ」
山都をズリズリと引っ張りながら陰火が素麺大食い大会むけて、引っ張っていく。
一方、雄太郎はそんな彼らを見ながらフムと頷いた。
「なかなか」
「楽しめたかな? 雄太郎」
とその言葉を引き継ぐようにして、背後に白髪に青色の着物少女が降りたった。周囲の人間達は彼女に気づいていない。
「私のおもちゃを勝手に使わないでほしいな」
「はっはー。せっかくの夏祭り、神様の僕だって、ちょっとは楽しみたいじゃないか。伊織?」
「フンッ、山都に恨みを持つ不良達をそそのかして、けしかけるなんて物騒な真似をしておいて、何が祭りだ」
「君のやってるほうが、もっとえげつないと思うけど? 彼、いつか潰れるかもよ?」
「そうなった時は、そこまでさ」
「ヒドい、神様だ」
ニヤリと笑う、雄太郎に、
「君だって神様だろうが。まぁ、今日は祭り、私も楽しむとするよ。イカ焼きを一度、食べてみたかったんだ」
スルリと踵を返して去っていく。伊織を見ながら雄太郎は言った。
「やれやれ、あの金髪くんには、もっと頑張ってもらうしかないみたいだねぇ。ま、僕には関係ないけど」
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