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「そうなのかぁ。すごいなぁ。うん。ところでさ、お帰りなさいませ。ご主人様って呼んでくれない?」
「舌を食いちぎって、自害してください」
「辛辣っ!? ていうか、セリフが変わって、いや、こう幼女に詰られるにも案外、悪くない。よし、陰火ちゃん。もう一回だ!! 是非、『まったく、貴方という人はダメダメなんですから』。是非とも、ツンデレっぽく」
さあさあと両手を振って、要求してくる雄太郎に、陰火は嫌なものを感じた。悪人ではないのだろうが、変人である。路上で幼女に、言葉責めを要求してくるなんて、
「変態っ!!」
だと叫んでしまった。
「フッ、陰火ちゃん。よく覚えておくといい。人は誰だって変態なんだ。いつもは分厚い皮でそれを隠してるだけなんだ。一皮、剥けば、みんな、変態。さぁ
!! 叫ぼうじゃないか。みんなは変態。僕は変態。陰火ちゃんは?」
「死ねばいいっ!!」
「ありがとうございます。そんな陰火ちゃんには、これをプレゼントしましょう」
と雄太郎はゴソゴソとポケットから、何かの券を取り出した。
「いりません」
「何も聞かずに断るなんて、陰火ちゃんはドSだなぁ。まぁまぁ、聞いてよ。近々、この街で夏祭りをやるんだよね」
「はぁ、だからなんですか」
「心底、めんどくさそうなに……、まぁいいや。実を言うと僕は、夏祭りの運営委員会に所属しててね」
「浴衣姿の女子でも観察するつもりですか」
「正解っ!! じゃなくてね。夏祭りなんだし、もっと若い子達にも来て欲しいと想ってさ。これを配ってるんだ」
雄太郎の差し出した、チケットには割引券の文字がプリントされていた。
「カップルっていうか、親子でもいいんだけど、二人組で来ると割引したり、特別なイベントに参加できるんだよ。陰火ちゃんもあげようと思ってね。集めて来たんだ」
「わたくしは、そんなイベントに参加するつもりはありません。それに貴方の贈り物なんて欲しくありません」
「本当に? ほら、金髪の少年と行ってみたら。きっと楽しいよ」
「どうして、そこで山都大聖が出てくるんですか」
彼は関係ないでしょうと言うが、雄太郎はヘラヘラと笑うだけだ。
「いいから、いいから、楽しんだほうがいいよ。難しい顔をしてるからって答が見つかるわけじゃない」
「え?」
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