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どこのバカがこんなもの思い付いたのか、と考えながらぼくはパンにかぶりついた。
150号線ぞいのサークルKで、当然のように人はいない。
昨日の今日だからまだ大丈夫だろう、とおにぎりとパンとお茶をいただき、お金をおいた。
サーKといえば焼鳥のぼんじり串が欲しがったが、それはなかった。
クレーターはできていなかったけど、それでもこの辺りは、地面も建物も土砂をかぶって砂まみれだ。
原チャリでそのまま走るにはちょっと危ない。
原チャリはここに停めておいて、「土星の一部」までは歩いていくことにした。
あいかわらず暗い。頭上の雲の「破れ目」からは陽がさすこともなく、むしろそのおくは見透せない。暗い。
けっこう歩いたあと、盛り上がった砂地に足をとられながら登り、えぐれた擂り鉢状の大地を下り、また土の盛り上がりを登り‥それの間近に来た。
大気圏内を滑り落ちてきたハズなのに、熱を持っているようではなかった。
それの周囲は土砂が飛び散っているだけで、致命的な災害が引き起こされているわけでもなかった。
ぼくがいるこちら側は、浜からまだだいぶん手前だが、向こうの端はきっと海に埋没しているような、‥そんな感じ。
土星てほとんど水素だっけ?なかのベージュと赤錆いろのミルフィーユには動きがある。
こんな、生きた土壌のボーリングみたいなものが打ち込まれてるわけか。
この、中が丸見えな透明の外部素材はなんだ?
眺めていると‥内部の見てとれる機微とはちがう、なにか動いた。影が。
それはなにか捉えづらいカタチをした、‥この内部空間の流れとはちがう方向に、遊弋するような‥
ぼくは思わず、いちど引いた。引いてから‥あらためて近より、その表面に手を当てて内部を覗こうとした。
‥と。あてた手の圧力でか、表面が、ボヨン、とたわんだ。
なにか手に触れた感触は、なかった。
ただ手首が痺れるような‥これは、
なんだこれ?と思ったとき、ぼくは思わず、そこに爪をたてていた‥。
うわ、まさか‥そんな!
という間もあらばこそ。弾けて‥ぼくは揺られ、煽られて‥「土星の一部」は、地にあふれた。
了
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