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そうして、昼前に目覚めた。あいかわらず暗かった。
スクランブルエッグを作って食べてから、家を出た。
原チャリで、ソコへいってみようと思った。
あの音は‥たぶん、そう。たぶん、昨夜、落ちただろうと。
それでいま、丘の上の城館みたいな袋井のゴミ処理場を正面に見て、交差点を左折した‥すでに、ぼんやりと見えているものがある。
信じられないけど‥あれがそうなのか。
たぶん後は一直線で行けるな、とぼくは思った。
あんなデカイものが宇宙から落ちてきたんなら、この辺までクレーターになってなきゃおかしいような気がした。
でも、道沿いには見覚えのある傾いだミカンの無人販売所がそのままの姿であって、なにか災害に見舞われた様子もない。
じきに遠くまで見はるかせる平野にでた。
もう、間違いない。あれがそうだろう。
薄いベージュと赤錆のような茶色の層が横縞になった、太い支柱のような‥えっと、たとえば棒アイスのチューペットみたいな‥あるいは、妙にまっすぐなウインナーソーセージみたいな‥そんなようなものが、視界のおく、人家と防風林の向こうに突き立っている。
周りの景色とそのものの纏う空気のかすみぐあいが違う。あれが「土星」らしい。「土星の一部」。
そして‥暗い空に感じていた違和感の正体が少しわかった。
灰色の濃淡に塗り込められてはいたが、どうも雲っぽくないな、とは思っていた。
「土星の一部」は雲の合間を分けているわけではなく‥まるで、紙のような薄い構造の皮膜かなにかを、掻き裂きのような断面をつくって突き破り、地上に突き立っている‥。
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