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気になってしまったから、遠巻きに突っ立って考え続けるのをやめて、俺はまずランドセルの名札をみてみようと思った。
ランドセルの持ち主の名前がわかれば、その親の名前、つまり教師の名前がわかる。
ところが、近づいて確認すると、ランドセルの名札の部分のプラスチックが、黒い絵の具か何かで塗りつぶされていて、名前が見れない。
だから、どこかに名前が書いてないかと探し回っていると、表面がやたら汚れていることに気がついた。
赤色をしているのでわかりづらいが、ランドセルをよく見ると、表面に赤い絵の具がついているのがわかった。
他にも緑色の絵の具、または草かもしれないが、緑っぽい汚れのようなものもついていた。
名前を塗りつぶしたり、絵の具で汚したり、この女の子はどうやらかなりおてんばなようだ。
さて、塗りつぶされた名前は見えないけれど、それは名前を知ることが簡単にはできなくなったというだけだ。
中身を見るという最後の手段がまだ残っている。
中にはきっと、名前の入ったものがなにかしらあるはずだ。
俺は早速、留め具をはずすため、ランドセルを傾けて底を浮かせた。
人様のものだから、倒さないようにしたいけれど、これがかなり重かった。
荷物が重いから置いていったという推理は、はずれていないかもしれない。
しかし、カチリとつまみを回したところで、俺は悩み始めてしまった。
開けているところを見つかったらきっと怒られる。
やめた方がいいかもしれない。
でも名前が持ち物からわかるかもしれない。
知りたいという気持ちも強い。
焦りの中、背中に冷や汗をかきながらランドセルを支えて、ドアをちらちらと見やったまま決断できずにいた。
よし、じゃあ、みられてしまったら、忘れものの名前を確認しようとしました。って言おう。
ランドセルを忘れるわけがないと自分で思ったはずなのに、そんなテキトーな言い訳を免罪符にして、ついにランドセルの留め具を取り外した。
まずはそっと覆いをずらすようにして、ドキドキしながら中を覗いてみた。
中に夕日の光が差し込んでいた。
しかし、すぐに覗くのをやめた。
・・・・・怖くなってしまったのだった。
すぐに留め具をして元の状態に戻し、ランドセルから離れ、右後ろの方の自分の席に座った。
やめておけばよかった。
そう強くおもった。
その時、教室のドアが開いた。
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