0人が本棚に入れています
本棚に追加
「先生の昔話・・・・・ですか」
唐突に言われて、反復することしかできなかった。
「そうだ。
このランドセルにまつわる俺の遠いとおい日のお話だ。
まあ気分のいい話じゃないんだが、聞く気があるなら、話してやってもいいぞ」
さっきの重たい沈黙でも、最初の気さくな様子でもない雰囲気で先生はそう問いかけた。
俺は知りたいと思った。
知らなければいけないと思った。
「聞きたいです。お願いします」
そう答えた。
「そうか。
じゃあおじさんの語りを聞かせてやるよ。
退屈かもしれんがな。
この年くらいになるともう昔話がはかどっちまうんだよなあ」
先生はまた気さくな雰囲気で話し始めた。
「それじゃあ───
今から遠い昔の27年前のことだ。
俺には1人幼なじみのやつがいてな。
名前は道輝(みちてる)って言って、それからしばらく付き合っていくことになるんだが、こいつがいいやつだった。
地域会の集まりで親同士が仲良くなってから、道輝と俺はよく遊ぶようになった。
幼稚園のころは、公園の砂場で遊んだり、鬼ごっこしたり、とにかく外で遊んでいたな。
最近の子はどうだ?外で遊んでるか?
うちにこもっててもおもしろくないぞ。
まあいいや。
それから小学校にあがっても、俺達はずっと遊んでいた。
ただ、多少やんちゃだったかもな。
危険なところほど燃えるから仕方ない、小学生は。
中庭の池で遊んで沈んでみたり、塀の上を渡ろうとして落ちたり、ぞうきんがけしたあとの廊下を走ってすべって転んでみたりしていた。
階段から飛び降りて足を捻挫したこともあったな。
小学生の男は高い段から飛び降りるほど、なんか、かっこよかったもんな。
まあそんなやんちゃも小3やら小4で落ち着いて、そっからはもっと普通のスポーツ的な遊びをしていた。
グラウンドで野球したり、サッカーしたり。
ただ、俺が落ち着きを持ち始めたそのくらいのときから、道輝も同じように、いやそれ以上に落ち着き過ぎてしまってな、内向的で人見知りなやつになっちまったんだ。
帰り道とかで、あんまり仲のいいわけじゃないやつが一緒いると、ずっと後ろにいたり、校庭に遊びに行く時も、ついては来るが、あんまりはしゃいだりはしなくなった。
でもそんな道輝になっても、俺達は仲がよかった。
そして俺が中学生になったときのことだ。
最初のコメントを投稿しよう!