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その後、夕日に照らされた教室で、壮一郎はしばしの間呆けていた。
自分の胸の辺りにふつふつと沸き上がる感情を、その味をしっかりと確かめていた。
"嗚呼"
壮一郎は思い出す。初めて話した日のあの笑顔を。
それ以降、不思議といつも目で追っていた彼女の姿を。
"これが恋か"
その日、壮一郎は初めて自分のその感情の正体を知った。
それから数年後、何はともなく卒業アルバムを捲っていると、この日の集合写真が出てきた。
その中で、壮一郎はクラスメイト達によって中央に座らされ、夕花の隣で最高の笑みを見せていた。
あの時、夕花が教室に来なければこの笑顔はできただろうか。いや、そもそもこの写真に写ってすらいなかったかもしれない。
そう思うと壮一郎は夕花に感謝してもしきれないのだ。
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