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電話から10分も経たずに駅に着くと、しかしそこにはすでに夕花が待っていた。あるいは、この場所から電話をかけてきたのかもしれない、と壮一郎は思った。
「なんの用だよ」
本来は真冬の中で待たしてしまったのだから、謝罪の言葉から入るべきなのだろうが、突然呼び出されておいて謝るというのも少し釈然としない。
なので、壮一郎はまず電話では頑として話してくれなかった今晩の目的について尋ねた。
「学校にいく」
「学校?なにしに行くんだよ」
「明日提出の書類、学校において来ちゃったのよ」
それか、と壮一郎は納得した。それは受験に関係する大切な書類で、確かに提出期限を過ぎることは好ましくない。が、しかし。
「んなもん、一人で取りにいけばいいだろ」
壮一郎はめんどくさそうに頭を掻きながら言った。
正直に言って、もう少しロマンチックな誘いなのではないかと期待していた壮一郎が、少し気を落としたのも事実だ。
「サイテー、深夜の学校に女子高生一人で行かせるつもり!?」
深夜の学校、という部分を夕花は強調しながら、壮一郎の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
もしかして、と壮一郎の中にある考えがよぎる。
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