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「もしかして、お前……怖いのか?」
壮一郎がそういった途端、夕花の顔が赤くなった。胸ぐらを掴んでいた腕の力も心なしか弱まる。
「ち、ちがう!ほら夜道とか危ないでしょ?不審者とか!」
夕花はまだなんとか誤魔化そうとしていたが、それが事実であることは誰の目にも明らかだった。
「はっはー、お前にも苦手な物があるとはな」
「う、うるさい!違うっていってるでしょ!」
もう一回、違うから!と言って夕花はそそくさと歩き出してしまった。
真冬の寒い夜道を前に夕花、その3歩ほど後ろに壮一郎が続いて進む。等間隔に建てられた街頭が、頻りに夕花の黒い髪を照らすのに壮一郎は見とれていた。
不意に夕花が立ち止まる。壮一郎は何かと思ったが、どうやら壮一郎が夕花の髪に見いっている間に学校に着いたようだ。
夕花が校門脇に座っていた警備員に事情を説明すると、警備員は校門の横に備え付けられた職員用の小さな門を開けた。
「早めに帰ってきてね」
警備員はそこだけ注意して、壮一郎達に懐中電灯を渡した。この時間は校舎の電気は点かないらしい。
それを聞いて案の定夕花は青ざめた。
「どうした?行くぞ」
懐中電灯を警備員から受け取った壮一郎はわざと弄らしく夕花に声をかける。
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