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"教室の戸を開けると、そこには僕らが待っていたんだ"
笹木壮一郎は学校の廊下を走っていた。息を切らしながら階段を上って目当ての教室を目指す。
与えられた時間はあまりない。
校舎4階の一番奥の教室。そこにたどり着き扉の上をみると、古びたプラスチックの板に3年F組と書かれていた。
少しだけ緊張しながら扉の引き手部分に手をかける。
一呼吸、走ってきて乱れた息を整えてから、扉を横開きに勢いよく開いた。ガラガラという音が鼓膜と記憶を刺激する。
扉の先、見慣れたはずの教室。
「ああ」
壮一郎は思わず声をあげた。絞り出すような、様々な感情を含んだ声だった。
扉の先、夕日に照らされた教室は酷く荒れていた。窓ガラスは割れ机と椅子は散乱し、黒板は裂けて傾いていた。
それでもその中に、あの日と変わらない何かを壮一郎は探し出していく。
入り口の戸を離れ、窓際の最後部の席へと歩く。窓側だったからだろうか、衝撃で机の足の部分がひしゃげていた。
壮一郎はその机を抱え上げて立たせる。そして、その机の上の汚れを手で払った。
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