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そんな話のネタにこそなるが、さすがに笑いは途絶えた教室で、しかしいまだに肩を震わせて笑っている人物がいた。
神田夕花、壮一郎の前の席に座っていた彼女も決して目立つ方ではなかった。
それでも、男間でクラスの誰が可愛いかの論争になれば、必ず二、三番目には名前が出てくる人物だった。実際に告白して玉砕した男子生徒も少なくない。
「……これ書いたのお前だろ」
意を決して壮一郎が話しかけると、夕花は笑うのをやめて振り返った。
笑いすぎたのか、目元に溜まった涙を拭いながら夕花は謝罪した。
「ごめんごめん、まさかあんな大事になるとは思わなくてさ」
言いながら夕花は堪えきれなくなり、また笑い出した。
壮一郎は何なら少し文句を言ってやろう、という気構えだったのだが、その笑顔を見てそんな気持ちはどこかへと飛んでいってしまった。
この時の彼女の笑顔を壮一郎は今でも鮮明に覚えている。そして恐らくこれからも忘れることはできないだろう。
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