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秋。食欲の秋、読書の秋。色々な秋があるが、壮一郎にとってこの日はスポーツの秋に他ならなかった。
秋の行事、体育祭である。
学校によって体育祭への熱はまちまちだと思うが、壮一郎の通っていた高校は体育祭に非常に力を入れていた。
もうひとつの主役行事と言える文化祭が無いこともあり、生徒の体育祭に対する思いも毎年相当なものだ。
加えて、全学年合同の六クラス対抗戦という形式が、学年の垣根を越えて全体の一体感と熱気を高める。
とにもかくにも、体育祭は壮一郎の通っていた高校にとっては一大イベントで、その日の学校は異様な熱気に満ちていた。
特に三年生の熱気は凄まじかった。
この行事が終われば、後は受験や就職に向けての準備が待っている。高校最後の行事であるこの体育祭は、まさしく彼らにとって最後の青春だったのだ。
そんな全力をかけた競技の数々はどれもデッドヒートだった。
最終種目の全学年リレーを残して、一位にA組、それを僅差で追う壮一郎のF組、さらにその後ろに僅差で他のクラスが続いている。
つまりは、この最終競技で全てが決まるような状況だった。
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