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第三走者まで走り終えた時点で、A組が一位、F組は四位という順位だった。
「よし行くか」
第四走者が全員出発したのを見て、橘がスタートラインに向かった。
その間にF組のランナーが一人抜き去り三位に上昇、そのまま最終コーナーに入った。
二年生の走者から橘へバトンが渡る。
三位でバトンを受け取った橘は圧巻の走りを見せた。
まずバトンを受けとるや否や最初のコーナーの前に二位を抜き去り、一位の後ろにぴったりとくっついた。
そして、最終コーナーに入る直前に、陸上部員のA組走者を抜き去ってトップに躍り出たのだ。
スタートラインで待っていた壮一郎はこの時やっと腹をくくった。拳をぎゅっと握りしめる。
橘からバトンを貰うとき「行け」という彼の声が聞こえた。
壮一郎は地面を蹴りだした。自分でもこんなに速かったか、と思うほどのスピードでグラウンドを駆ける。
周囲の観客には、おおというどよめきさえ広がっていた。
後続に徐々に差を広げ、最終コーナーへ。壮一郎は一度後ろを確認し、二位との差があることを確認した。
行ける!
そう思った時だった。
コーナリングで体重の乗った右足が、思ったより外側に開いた。そのまま、支えを失った胴体はバランスを崩し、気付けば視界には青い空が映っていた。
滑って転んだ。
そう認識するのにさらに一秒必要だった。
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