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いくらか勢いを失くした蝉の声に気付き、ふと窓越しの青空を見上げる。
夏の間、空のてっぺんに焦がれるようにひたすら膨らみ伸びていた真っ白な入道雲は、いつの間にか姿を消していた。
雲は遥か高くなってしまった空にごろんと寝転がるように遠くまで寛ぎ、気まぐれないわし雲をかたどりつつある。
ああ、秋が来るのか。
どうにも取り返しのつかない喪失感が胸に滲み出すのを感じながら、読んでいたテキストをパタリと閉じた。
夏休みとはいえ、高校教師という職業はそう楽なものではない。
フル出勤ではないものの、授業がない分暇といえば暇なのだが、好き勝手できるわけでもない。
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