敗者の願い

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暑さも少し風が変わり夜になれば涼しくなる、そんな9月の始まりのことだった。 「おお!ケン坊、腹減ったな。」 「もうすぐ昼だ今日の給食はなに?楽しみだよな。」 僕達にとって給食は唯一の楽しみだった。お腹いっぱいには食べられないけれども、 給食でだされる芋の蔓の雑炊やスイトンは今じゃ考えられないほど不味かったが、当日の僕達にはご馳走だったんだ。 ケン坊と廊下を歩きながら教室へむかう。今は短い休み時間。教室ではがやがやとシロウ達が雑巾を丸めて、キャッチボールをして遊んでいる。 風がバタバタと震えていたのに誰も気づいていなかったよ。 ウゥ~ウゥ~ウゥ~ウゥ~ウゥ~ 突然、緊急避難警報が鳴り響く。 「またかよ、うるさいなー。」 日常茶飯事、村中に鳴り渡る警報音に僕達は慣れてしまっていて誰も驚くことなどない。ただ警報だけが叫んでいた。
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