episode162  バスタブの悪魔

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「ママは?傍にいただろ?たしか――8つの時までは」 「いた」 「それじゃ」 言い掛けて 口を噤む。 「……ただ、いたんだ」 シャツの胸元が 熱い涙でみるみる濡れてゆくのを感じる。 「ただ、いたって――どういうこと?」 重い沈黙が物語る 母親との関係性。 「ママじゃない。あの人はただ――僕を生んだ女」 良好とは言い難い言い草で 和樹は吐き捨て鼻をすすった。
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