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「なに見てるんですか」
僕の視線に気づいた彼女は口をへの字に曲げながら、煩わしそうに訪ねてきた。恐らくその口を放っておけば、次に読書の邪魔ですと言われるだろう。だから続くのは僕だと主張するような大それたことを、だけど小さく呟くように言った。
「いや、相変わらず綺麗だなと思って」
一瞬、彼女が顔を赤らめた気もするが瞬きをした次の瞬間にはそれはなくなっていて、でも彼女は艶やかに笑っていた。
「私のこと好きですか?」
「もちろん」
僕は即答した。
クスクスと、手を口許にあてて、それから彼女は微笑みながらこう言った。
「私も先輩のこと好きですよ。それはもう爪の先から第一間接まで」
「狭いっ」
「冗談ですよ。頭のてっぺんから爪先まで以外ならなんとか愛しています」
「広いっ」
僕の落ち込んだ顔を見て、こんなにも外は暑いというのに、彼女は涼しそうに笑っていた。
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