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放課後、教室の戸を開けたらそこには彼女がいた。
彼女は窓辺に立ってグランドを見つめていた。
「🌕🌕?」
名前を呼ぶと彼女は振り向き微笑んだ。
夕焼けに染まる教室。
俺と彼女は黙ったまま見つめあった。
「……どうして?」
「まだやり残したことがあったから……」
夕陽を背中に彼女は照れたように微笑んだ。
「◇◇君が好きだった」
その告白になにも返せないでいると「いま言われても困るよね」と彼女は悲しそうな顔でうつ向いた。
「ごめんね。気持ち悪いよね」
そう言って彼女は無理に笑う。
「じゃあね。バイバイ」
陽が沈む直前、一瞬強くなった夕陽が笑顔の彼女を包み込んだ。
「🌕🌕っ!俺も、俺も〇〇が好きだった!今も好きだ……」
「ありがとう」
彼女は頬に一筋涙を流し満面の笑みで夕陽の中に消えていった。
静かになった教室。
さっきまで彼女がいた場所へ行くと床にはなにかが一滴零れたように濡れていた。
「〇〇……」
夕焼けで真っ赤に染まった空を見上げ彼女の名前を呟く。
俺の後ろ、窓際の一番前の席。
彼女の机の上には、今朝の悲報で花束が置かれていた。
《終》
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