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病院での出来事をまだ言っているのだ。あんな姿を見られて、真琴よりも伍紀の方がずっと恥ずかしいのに。
「俺、普通に職場復帰できる気がしないんですけど」
「ま、みんな大人だからその辺りは見なかったことにしてくれるでしょ」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよ」
「月川ぁ、お前下に降りてくるだけなのに、随分ごゆっくりだな。重役気取りか?」
いつもより少し遅い時間に事務所に入ると、ニヤニヤした佐々木がすかさず突っ込みを入れてくる。
出かける寸前に真琴から引き留められてこの時間になってしまったのだから、それはだいたい佐々木の想像通りなので。本当にこの人は、こういう方面でも鋭くて困る。
「遅刻はしてませんよ……所長こそ、ドア開けて出勤完了なんてうらやましいですね。だけどほどほどにして、たまにはうちに帰らないと市田さんに愛想つかされますよ」
「うっ……なんだその余裕。だいたいふたりしていい年なのに、今更本当の恋とやらをみつけたもんだから、盛りがついちゃって……」
「なっ……」
「どうせエロいことしまくってんだろう? やーらしーなあ、いっちゃん。いっ……たぁ」
「所長! それセクハラです」
お茶を運んでいた市田の肘鉄が飛んで、佐々木の話はそこで終わった。
長かった野良猫の件はまだ全面解決はしていないが、事件として警察の手に渡ったので、事務所としての案件は一応完了した。伍紀も少しの休みをもらい復帰してからしばらく経つ。
現在は主に浮気調査、身上調査を中心に、あとは便利屋的な仕事を伍紀が請け負ってそこそこ忙しい。就職活動で志村の出勤がめっきり減ってしまったのでアルバイトがふたり増えた。
「しかしなんでうちは男しか来ないんだ? なんかこう、華がないよな」
「しょうがないでしょ、探偵事務所なんて怪しいから女の子は敬遠しますよ。それに、そもそもそういうひとばっかりだから、引き寄せるんですよ」
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