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「いやほんと、お忙しいなら結構なんですけど……できれば、是非……」  結婚式に出席してほしいという、市田の話にとても驚いたが、報告をする市田の表情を見てとても幸せな気分になる。真琴もすごく嬉しそうだ。 「もちろん、出席するよ。よかったな、蓉」 「はい……ありがとうございます」  そうはいうものの、市田の表情は完全に晴れ晴れとはしていない。市田の性格からすると、葛藤がまだ残っているのかもしれない。  そんな様子を真琴が問いただすと、市田と佐々木は結婚式をするだけではなく、養子縁組をすることになったのだと告白した。 「お前らにとってそれは、とてもいいことだと思うよ」 「そうでしょうか……」 「どうせ佐々木が強引に決めたことなんだろ。お前は遠慮せずに喜んでいればいいんだよ」 「……俺はひとりだからいいですけど、所長はそれでいいのかなって。成人したとはいえ、娘さんもいますし」  真琴は市田の頭をくしゃくしゃと撫でた。 「お前はそれが嫌なのか? だったら佐々木にそう伝えてやるけど」 「いえ……提案してくれた時は、とてもうれしかったです」 「だったらいいじゃねーか。佐々木を信じてやれよ」 「はい……」
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