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空気の違いを肌で感じたことがあるだろうか。
月川伍紀(つきかわ いつき)は、とある設備の定期点検と修繕・設置工事などを行う会社に勤務している。
会社の規模は百人程度で、業界の中ではそこそこの規模だ。伍紀は主に現場に向かって現地で仕事をすることが多く、会社には朝と夕方以外ほとんどいない。他の男性社員もほとんど同じようなタイムスケジュールだ。
そんな、日中は女性の事務員がほとんどのフロアも、夕方を過ぎると現場から次々と人が帰ってくる。
伍紀が帰社したときは、残業中の女子社員が数名と、伍紀と同じように現場から戻って来た十数人の男性社員がフロアにいた。
席に着くと、ふと視線を感じて頭を上げた。フロアにいるほぼ全員が伍紀を見て、それから目を逸らす。誰も近づいてこないのに、ものすごく注目されているのを肌で感じる。
伍紀は寝た相手にはすごく色気があると言われることが多いが、自分ではよくわからない。
それ以外の他人からは、自分も含めて良くも悪くもフツーという程度の評価しか受けない。
見た目は某男性アイドル事務所のグループで例えたら五番手ポジションみたいだとか、雰囲気イケメンだとか、褒められているのか、けなされているのかわからないことを言われる。
目立たず騒がず。だから、社内でそんなに視線を感じた経験もなかった。
いったい、何なんだろう……不思議に思っていると声を掛けられた。
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