失くした記憶と新たな身体

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「すいまへん。壬生狼いうたら恐ろしい人ばかりやと思っとったさかい、えらいかわいらしゅうて笑てしまいました」  そん中でも沖田はんは愛嬌のあるお人やけど。と続けた女だが、いまその相手をしているとは思えないほどおだやかだ。  とにもかくにも、やはり沖田総司とやらにずいぶんと似ていることはまちがいない。となればやはり向かうべきは壬生狼だろうか。  女は粥を食べ終えたのをみて懐から細長い布を巻いたものを取りだした。 「女子やいうことは先生から聞いとります。さらし、巻いたほうがええんとちゃいます?」  いわれてみればたしかに巻くべきかもしれない。この寝間着ですらわずかに主張しているのだから潰しておくのが身のためだろう。  女の手を借りながら用意されていた着流しに着替える。我ながら手馴れているとおどろいた。自分が何者なのかわならないのが不思議でしかたない。  軽い昼餉をすませたという男と、買いだしに行きたいという女が壬生狼の屯所というところまで送ってくれるという。ありがたく好意を受け取り、どことなく違和の残る身体を引きずった。
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