清掃員

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「そんな物どこで拾ってきたんだ。面倒事は持ち込んでくれるなと、あれだけ注意したのにお前は…」 赤茶色の錆が垂れる高速道路の高架下、ライトグリーンの作業服に身を包んだ厳つい中年男が、怪訝な表情を浮かべて仁王立ちしている。昇って間もない朝日が仄暗く周囲を照らす中、その男と相対して立つ金髪痩身の若者は、右手に黒いポリ袋を提げている。不満気な彼はそれをアスファルトの上に降ろし、軍手をはめた手を腰に当てつつ、言った。 「こんな物、放っておく訳にもいかないだろ。どうせ後で一番に疑われるのは俺達なんだぜ。」 「馬鹿が、そのままにしてりゃ、警察が勝手に持って行っただろうに。これを処分でもしてみろ、ばれた時に俺達はめでたく第一容疑者で、仕事もクビだ。元の場所に戻してこい。」 「無理だ、4ブロックも向こうなんだぜ?途中で警察に見付かりゃ、俺は容疑者どころか現行犯だ。」 若い男は大きく息をつ吐き、袋を軽く足先で衝いた。すると、何やら嫌に柔らかいものが入ったそれはバランスを崩して横倒しになり、結ばれていなかった口から中身を…紛れもない、切断された人間の両腕を暴露した。若い男は大慌てで、転がり出た物を袋の中に押し戻す。それを見ていた中年男は、節だらけの太い指で目元を覆うと、天を仰ぎながらぶつぶつと悪態を吐く。金髪は、神への不満を口にする男の前で肉片をかき集めた。 「…だって、このまま警察に渡せば済む話だろ。」 「それが面倒だと言ってるんだろ、このスカポンが。関係無い話で延々事情聴取される身にもなってみろ馬鹿野郎。」 筋骨隆々の中年は溜息を吐き、自分が言う「面倒事」を理解できない、物分りの悪い新米を憂鬱な目で眺め、つばを吐いた。
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