清掃員

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「…見ろよ。」 マンホールを開けた人物は、棒を傍に置くと、足元の袋をその中に放り込んだ。しばらく時間を空けて、それが下水道にまで到達したことを知らせる、衝撃音のような鈍い水音が反響する。若い男は怪訝そうな顔で言った。 「廃棄物処理法違反だ。とっ捕まえて警察に行こうぜ。」 「いや待て。向こうが武装していないとも限らない。一旦様子を見るんだ。」 中年の男は頑として動こうとはしなかった。若い男は不満を口にする素振りを見せたが、男の緊張した面持ちの前に、鯉のように口を開閉するしかない。再び暗い路地に目をやると、もう片方の人物が同じく黒い袋を穴に落とそうとしていた。が、中身が先程よりも大きいのか、なかなか押し込むことが出来ない。突っ張って落ちないそれを、始めは足で、仕舞いには蓋を開けた金属棒で落とし込もうとしたが、やはり一部が地上に頭を出してしまう。白い人物は肩をすくめ、あきらめた様子で袋を引っ張り出すと、マンホールの蓋を元に戻し、袋を残したままさっさと建物の中に入って行ってしまった。太いボルトを路上に転がしたまま。 「…見てみるぞ。」 白装束の二人が扉を閉めるのを確認し、中年の男は呟いた。 「もう一度出てきたらどうするんだ。」 「その時はその時だ。俺たちは拳で対処し、何事も無かったかのように芝居を打つ。死人に口無し、って言うだろう。上手くやるさ。」  厳つい男は静かにそう答えた。そして口をつぐみ、低い体勢のままコンテナの陰から路地を渡る。踏まれ、衝かれた袋は汚れはしていたが、不思議なまでの強度によって、破れる事無くマンホールの横に転がされていた。中年男は袋の口を解きにかかる。閉じ口は出鱈目に結ばれていたが、男は器用に隙間を見つけて太い指を差込み、ものの数秒で解いてしまった。  そして、現れた中身に息を飲んだ。  
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