第3章

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「えー!人に説教して見とけなんてエラそうなコト言っといて、泣いて帰っちゃうってなんなのー?あの人」 柏の仕事を座って退屈そうに見学していた加賀美が、スカートについた土をパンパン叩きながら立ち上がった。 「柏様は、毎日泣いておられますよ」 磯部は、立ち上がった加賀美に柔和な笑顔で話しかける。 加賀美はキョトンと磯部の顔を見つめた。 「柏様の担当の磯部と申します。加賀美様ですね?閻魔様からうかがっております」 「あ、はい。今日1日よろしくお願いします」 ぺこりと頭を下げる加賀美にニッコリ笑って応える。 「柏様は、標的の声に耳を傾けて、いつも泣いておられます」 「あの声…に?」 標的を斬ると、時々、聞こえてしまうコトがあるのだ。標的が死に致る時の心の叫びが…。 「さて、次の仕事に参りましょうか」 磯部は、思案中の加賀美に笑いかけると、優雅な仕草で出発を促した。
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